渓流釣りのお金~遊漁券~

私が子どもの頃、今から20年以上前の話になりますが、生まれ育った地域は田んぼに囲まれた田舎町で、ゲームセンターやコンビニがあるわけもないので、遊びと言えば近所の川に釣りに行くことでした。その川は河口から数十km離れた泥で濁った小さなもので、数百円の棒竿に針やウキを付け、畑で掘り返したミミズをエサに名前も分からないような魚を釣っていたのを思い出します。

そんな時期、子どもながらに勉強のつもりで早朝にやっていた釣り番組を見ていました。それに映る川は近所では見かけることのできない透明な水で、その流れは非常に速く、足元には無数の石が転がり、仕組みの分からない謎の釣具を操るおじさんがいて…。その日、初めて渓流釣りの存在を知りました。

今ほどネットが盛んではない時代なので、簡単に調べることはできません。親にせがんで本屋へ行き、釣りの入門書を買って渓流を学びました。そして絶望しました(笑)同じ川釣りなのに近所の川とはまるで違う道具、複雑な仕掛け、難解なルール、釣りに興味のない親…。すべての条件が揃ってまたいつもの川へ出かけるのでした…。

と、前置きが長くなってしまいましたが、フィッシングコラム~釣りバショ日誌~の第1弾として今回は「渓流釣り」について書いてみたいと思います。

さて、渓流釣りの醍醐味と言えば山間の大自然に身を置き、水の音や光の反射、野鳥の声、山の緑と澄んだ空気を全身で感じながら魚を釣るということでしょう。そして魚の美しさも魅力です。

渓流と言ってもこれは総称のようなもので、最上流にあたる源流、その下流にあたる渓流、本流というように分けられます。もっと専門的な呼び名もあるかもしれませんがそれは専門家にお任せして…。

最上流の源流は自然が大変豊かな場所で、山頂に近い為、水温は低いのが特徴です。低水温を好むイワナはこの地域に多く生息していて、この魚を狙う為にキャンプ道具を担いで山を登るという釣りなのかキャンプなのか分からなくなる苦労が必要だったりします。そしてその下流の渓流と本流にはヤマメやアマゴなどの魚が生息していて、後述の「放流」によって管理された個体が多く存在します(アマゴは西日本の魚)。

渓流魚の特徴として、警戒心が非常に強く、すぐ石などの障害物に隠れてしまいます。人影を見ても隠れるし、自分の近くで仲間が釣られても隠れるし、とにかく臆病なのに食欲旺盛で食には貪欲。

うん、へんなやつらだ。

まあそんな彼らともうまく付き合わなければ釣らせてもらえません。普段彼らは上流から流れてくる水中昆虫などを捕食しているので、上流に頭、下流に尻尾という形で泳いでいます。なので我々は下流から上流へ向かってエサを投げ入れ、上から下に流してあげる、という感じでアプローチをかけます。お尻から近づいて行くので気付かれにくい、ということです。

そしてこの下から上へのアプローチの為には、川をどんどん登って行く必要があります。途中には水深が深くて川の中を進めなかったり、滝があって登れなかったりなんてこともあり、危険な場所盛沢山で決して安全ではないです。決して安全ではないです。大事なことなので2度言いました。

それ故に事前準備と予備知識が重要で敷居が高くなりがちだと言えます。詳しい道具などは次回以降のコラムで紹介できたらと思います。今回は飛ばします。

そして様々ある釣り方ですが、一般的なエサ釣り、毛針を使った日本古来のテンカラ釣り、同じく毛針を使った外国式のフライフィッシング、そしてこれも外国から来た小魚に似た擬餌を使うルアーフィッシングと大体4つに分けられます。これも次回以降に詳しく書きたいと思っています。

さあ、やっと本題です。

今回一番書きたかったこと、それは「鑑札」です!!!!

渓流について調べるまで「鑑札」についての知識なんて正直ありませんでした、すみません。海で勝手にサザエを取っちゃダメよ、とかは知っていましたが、川にもルールがあるんですよね。理科の授業で習う上流、中流、下流に分類して見てみると、中~下流辺りでバスとか雑魚を狙う釣り人たちは「鑑札って、何?」って人も多いんじゃないかと思います。

鑑札と書いていますが、これは釣券=遊漁券のことで、「指定された河川で釣りをすることを承認しますよ」という許可証のようなものです。指定販売店やコンビニでも買うことができ、6,000円前後の「1年券」と2,000円前後の「1日券」があります。

その中でも2~3種類あり、地域によって異なりますが、「鮎券(一番値段が高く、鮎や渓流魚のほぼすべてを許可)」「渓流魚券(イワナやヤマメ、ニジマスなどを許可)」「雑魚券(一番値段が安く、コイやフナなどの雑魚を許可)」という具合で分類されています。

「なぜ自然の川で釣りをするのにお金を払う必要があるんだ!」

「そのお金は誰の懐に入るんだ!」

「川にもN●KやJAS●ACみたいな奴らがいるのか!」

なんてご立腹の方もいらっしゃると思いますが、一度冷静になっていただいて受信料を収めてきてください。

さて、鑑札のお金は川を管理する漁業協同組合、通称「漁協」に収められます。この漁協の定める遊漁規則に従って遊漁権をもらう対価として遊漁料を支払っているのです。

この遊漁料は何に使われているのかと言うと河川の整備、渓流魚の保護や人工繁殖、稚魚や成魚の放流という釣り人が釣りを楽しめるよう川や魚を管理する為に使われています。釣り人の増加や乱獲によって渓流魚はかなり数を減らした時期がありました。このままでは渓流魚が絶滅してしまい釣りを楽しむことすらできなくなる!ということで漁協が管理をすることになりました。

ヤマメなどの渓流域の魚はそのほとんどが放流によって賄われており、天然物と出会うことすら困難と言われるほどで、漁協の方々の努力により渓流釣りは成り立っていると言っても過言ではありません。放流してくれた魚を釣らせて貰っていると考えれば、対価として遊漁料を支払うのは当然と思えてきますね。

ただ注意が必要なのが、管理する漁協によって川や区域ごとに別の鑑札があり、1枚買ったからと言って全国どこでも釣り放題ではありません。同じ川でも上流、中流、下流で管理漁協が違う場合もあり、しっかりと鑑札を確認せずに釣り場に入るとトラブルになることもあります。

トラブルというのは密漁者を監視する為、釣り場には漁協の監視員がいて鑑札を所持していない釣り人に券の購入や退去を求めたり、悪質な密漁者には警察への連絡など対応を行っています。意図せず別の区域で釣りを行っていると最悪の場合警察のお世話になりますので、鑑札を購入する際は管理漁協に対象区域を確認する必要などがあります。

また、遊漁期間という釣ってもいい期間が定められており、各漁協によって異なりますが一般的には3〜9月は遊漁期間、10~2月は禁漁期間です。この禁漁期間は魚たちの産卵期にあたる時期で、抱卵個体を保護することで魚は増え、釣り人は喜ぶ、というwinwinの関係もたらす為に必要な期間となります。鑑札を持っていたとしてもこの期間に釣りを行うと密漁になってしまい処罰されてしまいます!STOP密漁!

この他にも持ち帰り個体の「数の制限」や「大きさの制限」、持ち帰り禁止の「キャッチ&リリース区域」、魚を釣ってはいけない「禁漁区域」、「ソフトルアー禁止区域」など規制が多々あるので、必ず管理漁協に確認を取ってから釣りを行うのがマナーです。

何かとルールの多い渓流釣りですが、これも魚と環境、そして釣り人がいつまでも良い関係で付き合って行く為には必要なことなのだと思います。この縛りもひとつの楽しみだと捉え、渓流へ出かけたいものですね。

ルールの無いスポーツに面白みはありませんから。

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